観察されると反応する量子の性質を使った量子テレポーテーション

テレポーテーションというと、どこでもドアのようなものを思い浮かべてしまいますが、量子力学の世界ではそれとはちょっと違った量子テレポーテーションというのがあります。
実際に、窒素原子を使って離れた地点にある亜原子粒子の情報を100%の精度で伝達したという実験まであるのです。
量子とは
量子とは、原子やそれを形作る電子、陽子、中性子など小さい物質を表す単位のことです。
光を作る光子も量子になります。
非常に小さい世界で、ニュートン力学ではなく量子力学という不思議な法則に則って動いている世界です。
その不思議な例が量子テレポーテーションなのですが、ちょっと難しいので順に説明してみますね。
量子テレポーテーションの原理
まず、量子Aがあるとしましょう。
量子Aで実験するとaという結果が出ます。
ところが、量子Aを観測しながら実験すると、bというまったく別の結果が出てしまうのです。
量子は観測することでそれに反応して別のものになってしまいます。
正確に言うと、観測するということは、光を量子に当てることになるので、その光に反応して量子が変化するということですね。
次に量子Bとそれを分裂させたB’があるとします。このBとB’は量子がもつれ合った状態です。
もつれ合ったこの二つの量子を引き離してBの方を観察します。
すると、観察されたBが反応するのはわかるとして、まったく同時にB’まで反応するというのです。
量子テレポーテーションとは、この原理を使った通信手段のことなんですね。
量子テレポーテーションの例
量子テレポーテーションがどんなものか説明してみましょう。
量子Cとそれともつれ合う量子C’があります。
二つは離れた場所にあり、CからC’にXという情報を伝えたいとします。
次に、Cを観察してXともつれ合わせ、その結果をC’に伝えます。
するとなぜかC’はXに変化して元のCは消えてしまいます。
簡単に言うと、CがXに変化したかと思ったら、それと同時に離れた場所にあるC’がXに変化するということですね。
つまり、ここではXが移動したわけではなく、CをXに変化させると同時にC’もXになるので、あたかも瞬間移動したみたいに見えるというわけです。
将来どこでもドアができるかも?
量子テレポーテーションとは、物体が瞬時に別の場所に移動する、私たちがSFなどで目にするテレポーテーションとは違うことがわかりました。
ただ、まだまだ解明されていないことだらけなので、今後の研究次第でどうなるかわかりません。現実にどこでもドアのような道具が開発されるかもしれませんね。